タイムラインに流れてきた漫画をみた時「動いてるところが見た〜い」と思ったので、実際に動かしてみた話。セルアニメではなく静止画MADの作り方です。
発端
元ネタは陰陽師垢でフォローしてるまみぽこさんがクリスマスにうpしたこのマンガ。
内容は陰陽師で上段位の闘技やったことある勢しかわからないと思うんだけど、わかる勢なら共感しかない内容だと思います。最近闘技サボってる私ですら初見で「わかる〜〜〜〜」ってなりましたもんね。
1コマ1コマ見ていたら、脳裏に動いてる映像がぶわ〜っと浮かんできましてね……
動画で動かしたい…w
— 宵月 (@vesperfeel) December 24, 2019
言っちゃった!
ここから続いた会話で音源はニコカラが使えるんじゃない?というところで落ち着いたんだけど、歌ってくれる人いないかな?って、後日軽く募集かけたりもしてます。
その日のうちにまみぽこさんとのDMやりとりが始まりました。
翌日にサンプルとしてカラオケ音源の字幕ワイプ動画を作ってみました。
サンプル爆誕\(^o^)/ pic.twitter.com/loIQ4TREdy
— 宵月 (@vesperfeel) December 24, 2019
ゆっくり解説動画作ってから動画作りのテンション爆ageな状態だったので行動に移すのめっちゃ早かったです。
完成動画
以下の解説は全てこの動画についての話なので、まずはこれをみてください。
制作の流れと使ったソフトウェア
だいたいこんな手順でやりました。カッコ内は使ったソフトやプラグイン名です。
- イラストデータを用意する(Photoshop)
- 音楽データを用意する(Audacity)
- 音楽データに合わせて字幕とイラストを配置する(After Effects)
- アニメーションをつける(After Effects)
- エフェクトをつける(Saber、AEJuice、Motion Factory)
- MP4で出力する(Media Encoder)
一番最初にサンプルとして作ったカラオケ字幕動画では、以下のソフトを使っていました。
- RhythmicaLyrics タイムタグエディタ
- txt2exo ニコカラ作成補助ツール
- AviUtil 動画編集ソフト
RhythmicaLyricsとtxt2exoの組み合わせは、カラオケ字幕を作るという要件は満たしているんですが、バグによるエラーでAviUtil用オブジェクトを出力できないことが多かったです。
3日くらい格闘した結果、あまりにもエラーで詰まるので使うのをやめました。そうするとAviUtilである必要もなくなるのでAfterEffectsを使うことにしました。
Photoshop、AfterEffects、Media EncoderはAdobe製品なので、試用の7日間が終わると月額課金のサブスクリプション契約が必要になる有料ソフトです。昔はPhotoshopとAfterEffectsで30万円だったので月額課金になってかなり敷居が下がりました。
お金はかかるけど、フリーソフトのAviUtil群と比べると以下のメリットがあります
- 安定性
バグに悩まされることがほとんどない - 豊富なノウハウとプラグイン
大抵のことはググればわかるしエフェクト素材なんかは万単位で見つかる - 製品間の連携
イラストデータをPhotoshopで編集するとAfterEffectsで瞬時に反映される
AfterEffectsで範囲選択した部分だけをMediaEncoderで出力できる など - 業界標準
プロの現場で使われているのでスキルとして評価される
何事も住めば都といいますが、動画制作においてはソフトの力量に左右される点が大きいと思いました。
PCはMacBookPro(15インチの)とWindows(水冷ゲーミングPC)両方使ってたんですが、Adobe製品しか使わないならMacだけでいけます。
ニコ動関係のフリーソフトを使うならWindowsが必須です。
AfterEffectsの操作に関してはマウスよりMBPのトラックパッドの方が抜群にやりやすかったです。
イラストデータ入手

最初1コマごとに出力された画像を送ってくれたんですが、動画としてキャラクターを動かすためには背景と動かすキャラクターパーツを全部別のレイヤーに分ける必要があります。
それで元データの存在などを聞いてます。
フォントを聞いているのは字幕の作成で再現するためです。
このやりとりでまみぽこさんがずっとスマホに指で絵を描いていたいうのを知って、すごい衝撃を受けました。 弘法筆を択ばずというけど、筆すら使わない弘法もいるんだなと。
使っていたアイビスペイントというソフトもこの時知りました。
アイビスペイントの場合、保存のファイル形式をPSD (レイヤー維持) にすればPSDファイルが生成できます。それをメールに添付して送ってもらいました。

テキストも全部画像になってたり、レイヤーの名前がついてなかったりするけどばっちり開けました。
イラストデータ編集

もらったPSDを元に動画用のイラストデータを作ります。
- 1コマ=1シーンとしてPSDファイルを分ける
- 画像サイズを16:9に変更
- キャラクターや演出パーツをレイヤーに分ける
- ぼやけた線や塗り忘れなどの修正
- 全レイヤーに命名
これを全シーン分やりました。

動画制作しながら追加で描いてもらったイラストもこのPSDファイルへ統合しています。
カラオケデータ編集
まみぽこさんが声入れたくなったと言い出したところからカラオケ字幕案がなくなったんですが、いい歌い手がなかなか現れず、まみぽこさんがカラオケ行って録音したのを使おうと思ってました。
3日後の12月29日に最終的に使った音楽の元データが届きます。

音質は悪かったけどもうベストマッチすぎて(特にハハウエモドッテキテーが私にぶっ刺さりで)満場一致でこれを使うことに決定。…したものの音質が悪かったのでどうにかする必要がありました。
音編集スキルの持ち主が現れなかったので自分でやるしかない。
試しにAudacityを使ってみました

- 息がぶつかった時のノイズ音の消去
- エコーエフェクトの追加
- カラオケ音源の短縮化
- カラオケ音源の合成
Audacityはフリーソフトですが動作も安定していて使いやすかったです。
息がぶつかったノイズ音消去は3箇所ほどだったので編集でどうにかできましたが、後に送ってくれた2本はどちらもノイズが多すぎて断念せざるを得ませんでした。
声だけ抽出してカラオケ音源と合成したかったですが、録音されたカラオケ音源が小さすぎるせいか抽出できなかったので、そのまま被せてます。
エコーの追加はこの記事がすごい参考になりました。
Audacityの使い方(エフェクト編) – ボーカルのトリートメント【ボーカル録音講座3-3】
アニメーション作成
Adobe製品の動画編集ソフトはPremiereとAfterEffectsが二大巨塔ですね。
Premiereは横につなげていく編集、AfterEffectsは上下に重ねる編集に強いソフトです。
もう一つAnimateというアニメーション作成ソフトがありますが、これはもともとFlashと呼ばれていたもので、ベクターイラストを描いて動かすことができます。

PhotoshopファイルをAfterEffectsで読み込むと、ソースファイルごとにフォルダが生成され、その中にフッテージに変換されたレイヤーが配置されます。ソースファイルとリンクしているので、元のPSDデータをPhotoshopで編集すると、編集内容は自動的にAfterEffects側でも反映されます。
レイヤー名がそのまま利用されるので、名前をつけてないと読み込んだ時に全部「レイヤー1」とかになって何が何だか分からなくなります。イラスト編集の時点で全レイヤーに命名していたのはこのためです。
After Effectsでの手順
AfterEffectsではこういう手順でやりました:
- メインになるコンポジションを作成
- ①のコンポジションにカラオケのMP3ファイルを配置
- シーンごとに分割したPSDファイルを読み込み
- 自動生成されたコンポジションのフッテージをコピーして①のタイムラインにペースト
- ①のタイムラインで音楽に合わせて動きやエフェクトをつける
- プリコンポーズでコンポジションにする
- 2〜6を全シーン分繰り返す
- シーン間のトランジション作成
AfterEffectsでは素材はフッテージと呼ばれます。フッテージをいくつかまとめたものはコンポジションになります。Photoshopでいうところのスマートオブジェクトですかね。
Photoshopから読み込むと自動的にコンポジションが作成されるんですが、そのコンポジションの中に全てのフッテージが収まっているので、元絵と同じ位置に配置する手間がありません。
音楽と合わせるために一度メインのコンポジションへコピペして、編集してから改めてコンポジション化するという手法でやりました。
動きの付け方

AfterEffectsでの動きの付け方は以下のどちらかになります:
- キーフレームごとにプロパティを設定して操作
- エクスプレッション(JavaScript)で操作
一番お手軽なのはキーフレーム操作で、上の画像右側にある白い点がキーフレームを設定した場所です。エクスプレッションは timeToStop = 3.20;
と書いてあるところがそれです。JavaScriptで操作するので、キーフレームを打つ手間がありません。
どちらを使うかというのは動かし方によると思いました。ブルブル動かすようなのはキーフレームよりもエクスプレッションの方が圧倒的に楽ですが、そういうイメージとマッチする動かし方がどれだけできるかというのは経験値に依存するので、初心者のうちは都度調べながらやるしかなく、調べて試すのを繰り返すので時間がかかりました。
字幕ワイプ
AfterEffectsにしたことでAviUtil用字幕データは使えなくなったので、全部手作業でやっつけてます。

作り方はすごい単純です。
- 元の歌詞字幕をテキストレイヤーで配置(黒い文字のやつ)
- ワイプになる字幕をテキストレイヤーで①の上に配置(青い文字のやつ)
- ②の字幕に長方形マスクを作成
- 音楽に合わせてキーフレームを打ってマスクの幅を操作
タイムタグから字幕を生成するプラグインを作ってる人もいるみたいなので、それを使えばもっと楽できるんじゃないかと思います。
エフェクトについて
初めてだと右も左も分からんものですが、ググれば解決策が出てくるのがAdobe製品のいいところです。エフェクトは自分で作ったものとプラグインや素材を利用したものが混じってます。
ActionFX Classic
テンプレート式の素材集です。なんとこのクォリティで無料。
- シーン4「これでもやれるだけ厳選したんだよ」雲のワイプ
悩ましさをモクモクで表現したかった - シーン6「不知火化鯨化鯨胸が痛いよ」波のワイプ
ここは絶対波がざぶーんでワイプだと思ってた - シーン11「通常攻撃が全体攻撃」爆発と煙
ゲーム内のエフェクトに似せているつもり。ひび割れはAEJuiceの素材 - シーン13「もうそこから全体攻撃で終了さ」不知火の炎エフェクト
色を編集してピンクにしたらちょうどいい感じになった
AEJuice
Seamless Transitions、Monster Transitions、Liquid Elements、ShapeElements2の素材を使いました。有料素材だけど買う価値がある内容だと思います。
- シーン1「やっと敵倒れたかい?」煙
最初は円形マスクしてブラーさせた手作り素材だったけど変更 - シーン2「それなのになぜ蘇生してくるんだい?」鬼切の剣撃
最初何も入れてなかったけど不知火を派手にしたので合わせて追加 - シーン5「スキルが御魂を追い越してきたんだよ」煙と拍手時の線
こういう煙ゲームでも出てたような気がするけど尻尾だったかもしれない - シーン7「SP酒呑鬼切戦いたくないよ」炎と雷
後半泡吹いてる以外の動きがなかったので追加 - シーン8「遥か昔はレアリティなしに」文字上のキラキラ2種類
背景はパーティクルです。より輝いて見えると思う - シーン9「御魂でキャラ輝いてたのに」Clockwiseトランジション
画面がぐるってなるやつ。この後からサビだけどモーションは地味なのでトランジションを派手にした - シーン10「僕の闘闘闘技モチベーション」背景のストライプ、Hitトランジション
背景のストライプでより溶けてる感を出した。トランジションは2シーンの動きに合わせたもの - シーン11「通常攻撃が全体攻撃」地割れ3種類
3Dレイヤー化して重ねてる - シーン12「君が全然動かなくたって」不知火の泡
ただ倒れてるだけなので表現の追加として - シーン14「むしろゼロからまた闘技を」キラキラ3個
より光ってる感が出てると思う
Saber Plugin
光らせる表現に特化した無料プラグインです。不知火の羽をモヤらせたくて使ってみた。

プラグインの効果だけだと骨っぽくなってしまうので、最初に作った羽のレイヤーの上に重ねて形を出してます。
ゲームと全く同じにはできなかったけど雰囲気は似せられたんじゃないかなと思います。
こういうことがサクッとできるのもAEのいいところです。
パーティクル
プラグイン使わずCC Particle Worldだけです。
- シーン8「遥か昔はレアリティなしに」背景のキラキラ
- シーン9「御魂でキャラ輝いてたのに」号泣の涙
- シーン13「もうそこから全た攻撃で終了さ」不知火の火の粉
- シーン14「むしろゼロからまた闘技を」烏帽子周りのキラキラ

最初のイラストではこんなに泣いてなかったですがw号泣の涙はいい感じにできたと思います。
パーティクルに利用したテクスチャはうるうるしてる時の涙と同じレイヤーです。
パペットピンアニメーション
シーン10のやる気が出なくて溶けてる動きはパペットピンツールによるものです。

ピンを打ったところをつまんで動かすとその通りに絵が動く機能なんですが、こういうイラストと動かし方にはベストマッチな組み合わせだと思いました。
爆発アニメーション
シーン11「通常攻撃が全体攻撃」でSP酒呑が攻撃するところです。
元のイラストはこれでした。

ゲーム中のSP酒呑はこんな感じですよ
爆発カートゥーン素材とかを合わせて表現してみたのがこれです
最初は地面が割れる素材は入れてなかったですが、酒呑が上下する動きだけでは何が起きるか分かりにくかったので追加しました。

爆発の素材に3Dレイヤー化したひび割れ2種類重ねたのが素材のみの画像です。
その上に丸くマスクした白い平面をオーバーレイで重ねて爆心を光らせました。
画面全体に影響が欲しかったので、CC Radical Fast Blurでフレア効果を入れました。よく見るとFratal Noiseによる煙でモヤってたりもします。
FF14ではフレア効果があると視界悪くなるのでオフにしちゃってますが、あった方が爆発してる感が高まりますね。
爆発で画面外に吹き飛ばされて消し炭で落ちて魂抜ける一連の流れは尺が足りなかったのもあって追加で描いてもらいました。
落ちてきた時の吐血は手書きのパスアニメーションです。
割れて崩れ落ちる背景

シーン8から9の間で入れている崩れ落ちる壁はシャターで作ったものです。
最初はバラバラになったのを手書きで再現するのを考えたんですが、流石に面倒すぎて…w

デフォルトだと真ん中に物がぶつかって割れる感じなんですが、調整でバラバラと崩壊するような動きに変更しました。
3D斬撃エフェクト
シーン13の離影状態の不知火が無双するシーンは3D化したレイヤー操作で作りました

斬撃の作り方はこのブログの記事が参考になりました。ゲーム中の不知火の攻撃は全体攻撃の後に鬼火の数だけランダム攻撃になります。動画でも回転は8回にしたのですが斬撃もそれに合わせると物足りなかったので、音と尺に合うように多めに入れてます。
2Dイラストの回転表現
正面だけ描かれた2Dイラストを回転しているように見せる方法は以下2つあります
- X軸スケールを100→0→100にする
シーン3で遅いよと煽ってる小白がこれです - 3Dレイヤー化してY軸を回転させる
動画中で回ってる不知火は全部これです
どちらも使ってみたんですが、Y軸回転だと後ろ姿になった時も顔が見えてしまうのでスケール操作よりも違和感がありました。

なので、追加で後ろ姿を描いてもらって羽の裏に配置。不透明度・Y回転・Z位置を操作して後ろ向きになったタイミングでは後ろ姿の絵が見えるようにしました。
実際は3Dのような回転はしてないんですが、後ろ姿が一瞬見えるだけで全然違います。
タイムラインの全景
完成したタイムラインはこうなりました(上6シーン分切れてます)

シーンごとにコンポジション化してからシーン間のトランジションをつけました。
動画素材を多用する作品ならPremiereProが必要になってくると思いますが、静止画MADならAfterEffectsだけで作れますね。
反省会
年末年始ずっと仕事してたのもあって3週間もかかってしまいましたが、完走できてよかったです。
まみぽこさんにはシーンごとに動画を見せて進捗を報告していました。
MediaEncoderでの出力のお手軽さがすごく役に立った。
こうしてメモリながら反省会をしていると、ダメなところが見つかるもので…
- シーン2「それなのになぜ蘇生してくるんだい」不知火が反転している
- シーン13「もうそこから全体攻撃で終了さ」倒したのにぃ!を入れ忘れ
確認したのにぃ😭
2020年は動画製作スキルを高めると決めたので、この反省は次に生かします!
ニコカラ音源を使わせてもらったのでニコ動にもうpしていますが、内容はTwitterと同じものです。